村田エフェンディ滞土録

想定外にも、本当に心臓がぎゅっとなった作品。

■あらすじ
舞台は1899年イスタンブール。留学中の考古学者、村田の下宿先には同じく考古学を学ぶドイツ人留学生オットー、ギリシャ人留学生ディミトリス、3人の世話役のようなイギリス人のディクソン夫人とトルコ人のムハンマドが住んでいた。下宿仲間との日常をメインに、現地での怪奇体験や職場でのエピソードが村田の視点で綴られていく。

各々異なる文化をもつ下宿仲間の絶妙な距離感の中で育まれる友情と当時のイスタンブールの様子が細やかに書かれていて心地よいです。
そして何と言っても最後。切なくて、心臓がグっと収縮したようになりました。帰国し、下宿仲間たち懐かしむ村田君の様子が本当に切なくて…こんな流れで、そんな演出されたら涙がちょちょぎれてしまう!

正直、読んでいる途中はそんな衝撃を受けるとは思わなかったです。
物語の9割が異なる文化的背景をもつ下宿の仲間たちが仕事をしたり、おしゃべりしたり、たまに喧嘩したりといった日常を描いていて、ラストもこの感じで淡々と進んでいくかなと思っていました。彼らの軽妙なやりとりやイスタンブールの丁寧な情景の描写を楽しむ作品なんだと。が、物語の最後でそれまでの穏やかな出来事がただのエピソードではなくて、読者である私にとってもかけがえのないものになってしまった。想定外にも、村田君と共に涙。

さらっと読めるという点でもオススメです。


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